なまこ壁のある建物

公開日 2016年02月05日

松崎町のなまこ壁の特徴

  1. なまこ壁の構成。方形の瓦を斜めに張った四角張りがほとんどで、瓦を横に張った、芋目地、馬乗り目地は外壁には2例で、内壁にも4例見られた。七宝繋ぎは旧岩科学校の建物の腰の外2ヶ所に見られるのみである。
     
  2. なまこ壁は、伊豆の特徴である軒下までのものが多く、なかには妻板・軒先の鉢巻きまで経てなまこ壁の建物もあった。また反対に、なまこ壁が隣の建物との間、西側の壁面や妻側のみと言う、火災の多い冬の季節風に配慮した建物もあった。
     
  3.  蔵の出入り口は、大棟に平行の面に入り口のある平入りがほとんどで、特別の地形等に妻入りがごく僅か見られた。
     
  4. 蔵の入り口の防火戸は、引き戸か観音開き扉かに地域性があり、関東は観音開き、関西は引き戸が多いと言われる。町内ではほとんどが引き戸で、数は少ないが観音開きもみられた。その中で「軸摺戸前」の痕跡が金沢にあった。観音開き以前の工法とされるもので、框の上下に穴をあけ、扉の軸木を差し込んで、それを芯にして扉を開閉する珍しいものである。
     
  5.  擬洋風について。明治13年落成の旧岩科学校には、各所に擬洋風が取り入れられて、和洋折衷のそれなりの風格がただよう。この影響を受けてか、蔵の鉢巻き、母屋の軒蛇腹などがアール状に、窓の上部がアーチ型などの擬洋風の傾向のものがあった。
     
  6. 様々な漆喰彫刻などに優れた職人の技が見られた。
    • 鬼瓦の裏盛り・「はなかぶ」・熨斗止め当に漆喰彫刻が多く、伝統的な唐草模様等のほかに、古代ギリシャ・ローマの建築で柱頭模様とされた、アカンサス等の漆 喰彫刻も見られ、当時の職人の技のほどがしのばれる。
    • 霧除けの持ち送りや、下屋の袖の恵振板等に芸術作品としても通用するような立派な浮彫り(レリーフ)がいくつも見られた。また入江長八の数ある作品の中で、唯一建物の外壁に残された、落款のある漆喰彫刻もみることが出来た。
    • 彩色された漆喰彫刻は八木山で母屋の2階の窓の霧除けの軒裏に1ヶ所見られた。
    • 珍しいものとしては、雲見で蔵の防火引戸に、薄い青色の下地に墨で見事な唐獅子と牡丹の描かれて居るものがあった。引き戸の絵は非常に珍しいものである。
       
  7.  棟の造りの珍しい蔵が南区と雲見にあった。瓦を使わないで、切石をU字溝のように加工して伏せてのせ、継ぎ手は漆喰で固めたものである。長屋の棟には例があるが蔵にはめずらしいものである。
     
  8.  「調査時の保存状態・印象・意見等」に記されている戦時中の防空対策の墨の痕とは、戦時中空襲が激しくなり、伊豆の上空を爆撃機が飛来し、吉田に爆弾が落とされたこともあった。この前後のころか、建物の白壁が空襲の目標になるといって、タール様の黒い液体を吹き付けられた。その跡が今も残っているものである。

蔵の構造図

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