さらさらと幾年月も変わりなく流れる那賀川は、遠く天城連峰を源とし、ざわざわと砂浜をたたく音は、遥か彼方の太平洋に繋がる潮騒・・・。その接点で、自然の恵みと人情の豊かさを誇る松崎町は、伊豆西海岸の中心地であると共に、歴史の町でもあります。
空海（弘法大使）は、今から1170年前の大同3年、伊豆巡錫の時、門野の富貴野山に寺を創立し、一方、永仁5年（1297）に来朝した元の使僧一寧は、678年前の正安3年（1301）、船田に帰一寺を開基しました。
さらには、松崎城主渡辺伊予守、文寛上人と源頼朝の出会いなど、ロマンを秘めた数々の史跡と文化財・・・。
また、この町は昔から農業、漁業、商業を中心とした西海岸の中核地として栄え、蚕業華やかなりし頃は、早場繭の産地として、日本の市場価格を制したともいわれています。
私達は、このような郷土松崎町を愛し、誇りに思うと共に、その歴史と伝統を守り、さらに新しいふる里づくりに立ち上がらなければなりません。昭和53年度を起点とする「花とロマンのふる里づくり」は、町民の皆さんがこのような町の歴史を知り、そこに溢れる数々のロマンを胸に、新しい松崎町をつくり出すふる里づくりにほかなりません。そのような意味あいから、このほど『花とロマンの里－松崎町』を刊行致しました。
町として初めての試みですから、至らない点、不備な点などあるかと存じますが、みなさんのご批判、ご指摘をお願いし、さらにより良い『花とロマンの里－松崎町』と致したいと思います。
なお最後に、ご協力いただきました現代旅行研究所の野口冬人、竹村節子両氏をはじめ、資料提供など関係の皆さんに深く感謝申し上げます。
昭和54年3月