公開日 2016年02月02日
第19回長八まつり
総評
今年度は、昨年より10点少ない49点の応募がありました。
昨年に引き続いての応募者が多いのですが、今回新たに出品した人も少なからずあります。
入賞者15名の外に昨年同様佳作15点を選び、松崎町役場内の特設会場に期間中展示することにしました。
入賞者15名の内訳をみると、昨年からの連続入賞者は約半数の7名です。
昨年は佳作もしくは選外だった人の入賞は6名で、残りの2名の入賞者は昨年出品していない人です。
こうしてみると、入賞者が固定化しすぎているということはなく、かなり流動的な状況にあると言えます。
昨年の図録を取り出して見比べてみると、作品の傾向がかなり大幅に変化している人が少なくありません。
そのことは、あくまでもご本人の問題ですが、全国各地から集まった様々の傾向と技法の鏝絵を会場で直接見たり、図録によって見ることも無関係ではないような気がします。
つまり、彫刻的傾向と絵画的傾向、あるいは、伝統的重視と革新的姿勢というように、様々の異なった技法や方向性が混在しているこのコンクールの場において、異質な個性がぶつかり合ったり、時には影響し合うこともあるのではないでしょうか。
今回の作品を見渡しても、ある特定の方向性だけが強まっているということは無く、多様な個性と価値観が鎬を削って競い合っているように思われます。
だとすれば、3回目を迎えた本コンクールは、当初の目標に向かって、少しずつではあるが着実にその役目を果たしつつあると言ってもよいでしょう。
富山大学教授 丹羽 洋介
審査員
- 富山大学教授:丹羽 洋介
- (財)ベルナール・ビュフェ美術館参事:安達めぐみ
- (社)日本左官業組合連合会会長:池本 孝
- 「左官教室」編集長:小林 澄夫
- 彫刻家:平馬 学
- 漆喰鏝絵職人(一級左官技能士):山本 堪一
氏名 | 作品タイトル | 地域 | |
最優秀賞 | 青葉 直一 | 「蔵の風景」 | 静岡県磐田郡豊田町 |
優秀賞 | 寺尾 晴美 | 「のんびり」 | 愛知県春日井市 |
塩川 甲子夫 | 「暁光」 | 神奈川県横浜市 | |
松崎 洋子 | 「ナマコクラゲカベ」 | 富山県富山市 | |
入賞 | 野中 順子 | 「彩る」 | 愛知県名古屋市 |
星野 一男 | 「薔薇」 | 群馬県沼田市 | |
中井 史枝 | 「横からの発見」 | 三重県阿山郡阿山町 | |
加賀美 二朗 | 「登竜門(第二章)」 | 山梨県南巨摩郡増穂町 | |
斉藤 志げ子 | 「眼鏡銀杏」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
小林 佑子 | 「みゆき」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
小野 和司 | 「秋影」 | 埼玉県南埼玉郡菖蒲町 | |
森山 幸良 | 「ぶどうと小鳥」 | 富山県富山市 | |
佐伯 昌徳 | 「珍竹林の仲間達」 | 富山県滑川市 | |
鈴木 勘一 | 「待つ」 | 静岡県磐田郡豊田町 | |
佳作 | 田畑 晃 | 「遊ぶ若鮎」 | 富山県上新川郡大沢野町 |
野田 正三 | 「職人の友」 | 岐阜県郡上郡八幡町 | |
佐藤さつき | 「富士にたか」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
谷川喜伊子 | 「飛躍」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
中村 一夫 | 「西洋の白い城」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
関 健一 | 「昇龍」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
岡本 昇 | 「三四郎」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
高橋 正哉 | 「椿に目じろ」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
壬生むつみ | 「鳥追い美人」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
新井 良作 | 「伊東潮吹岩」 | 埼玉県川越市 | |
岡村 富雄 | 「鍾馗」 | 茨城県新治郡八郷町 | |
野津 義輝 | 「Flowers」 | 茨城県つくば市 | |
酒井 武雄 | 「我れを学ぶ」 | 福岡県八女郡黒木町 | |
三浦 辰彦 | 「ふるさと」 | 福岡県大野城市 | |
竹本 茂之 | 「白龍」 | 石川県金沢市 | |
応募者 | 桜庭 喜幸 | 「あゆ」 | 秋田県南秋田郡五城目町 |
鷲谷 隆 | 「日本海の夕日に舞う夢の巨鷲」 | 秋田県南秋田郡五城目町 | |
手塚 忠昭 | 「伐折羅大将像」 | 東京都杉並区 | |
小河原芳弘 | 「万里の長城」 | 東京都練馬区 | |
水澤 正二 | 「馬上謙信」 | 新潟県上越市 | |
沼田 友恵 | 「幸」 | 富山県小矢部市 | |
保坂 勇義 | 「白い冬」 | 山梨県中巨摩郡若草町 | |
高橋 正道 | 「連獅子」 | 長野県佐久市 | |
島野 信博 | 「松崎町」 | 静岡県静岡市 | |
豊田喜二三 | 「日本髪」 | 静岡県浜松市 | |
伊藤 重利 | 「薔薇」 | 静岡県沼津市 | |
勝又幸一郎 | 「富士山大沢崩れ」 | 静岡県富士宮市 | |
佐藤喜代子 | 「ひまわり」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
新田 文江 | 「寿の舞」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
山田 武雄 | 「潮騒(三四郎島)」 | 静岡県賀茂郡松崎町 | |
河合 英喜 | 「庭園」 | 三重県三重郡菰野町 | |
津田 誠一 | 「白不動明王」 | 滋賀県大津市 | |
宮里小百合 | 「愁」 | 沖縄県那覇市 | |
宮城 満 | 「錦絵」 | 沖縄県中頭郡中城村 |
最優秀賞作品
「蔵の風景」
青葉 直一
静岡県磐田郡豊田町
盛り上げと彩色潟の作品が多い中でこの作品は、ひたすら効果を強めようとするのではなく、むしろセーブしたところが成功に結び付いたと言えます。
抑えられた色彩が控えめな立体の効果を生かし、ポイントを絞った彫刻的表現が抑制した色彩の魅力をさらに引き立てています。漆喰で漆喰壁を表現したことも与かっているでしょうが、ここには対立がなく、幸せな調和の世界があります。
優秀賞作品
「のんびり」
寺尾 晴美
愛知県春日井市
盛り上げの時点から色漆喰を使っているので、彫刻の表現と絵画表現が同時進行でなされるのがこの作者の技法の特色です。洗練されたデザイン性も合わせて、今後、この傾向の作品が増えることを期待している審査員もいます。
「ナマコクラゲカベ」
松崎 洋子
富山県富山市
ナマコ壁の塗り壁技法を自己流にアレンジして鏝絵にする着想には、長八も大いに驚くかもしれません。それが単なる奇抜さを狙っただけのものに落ち入っていないのは、作者が本物のなまこ壁を見たときの感動が出発点になっているからでしょう。この作品の様式がより洗練されたものになって、再び元の土塀に生かされることになっても面白いと思います。
「暁光」
塩川 甲子夫
神奈川県横浜市
昨年の作品との傾向の違いに驚かされますが、どちらのスタイルにおいても高い完成度を見せているのは、作者の際立った技能によるものでしょう。この2作が今後、作者の中で1つの世界になった作品もぜひ見たい気がします。
入選作品
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「登竜門(第二章)」 加賀美 二朗 山梨県南巨摩郡増穂町 |
「眼鏡銀杏」 斉藤 志げ子 静岡県賀茂郡松崎町 |
「横からの発見」 中井 史枝 三重県阿山郡阿山町 |
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「彩る」 野中 順子 愛知県名古屋市 |
「草庵の老師」 堀江弥太郎 東京都三鷹市 |
「みゆき」 小林 佑子 静岡県賀茂郡松崎町 |
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「秋影」 小野 和司 埼玉県南埼玉郡菖蒲町 |
「待つ」 鈴木 勘一 静岡県磐田郡豊田町 |
「薔薇」 星野 一男 群馬県沼田市 |
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「ぶどうと小鳥」 森山 幸良 富山県富山市 |
「珍竹林の仲間達」 佐伯 昌徳 富山県滑川市 |