公開日 2016年01月29日
第27回長八まつり
総評
本コンクールの趣旨は、改めて言うまでもなく、長八が築き上げた漆喰鏝絵の伝統を将来に向けて保持しつつ、現代の感覚に合った新しい鏝絵の発展を目指して、鏝絵制作の実践を全国に働きかけていこうとするものです。そうした意味からは、出来るだけ数多くの応募作品が全国から集まることが期待されるわけですが、今回の応募点数はこれまでで最も少ない37点だったので、この数字だけ見ると残念な気がします。しかし、出品者の地区別の内訳を見ると、最も応募点数が多かった第1回展の61点のうち、地元松崎町を含む静岡県の人が占める割り合いは24人で40%に当たりますが、今回は7人で19%ということになります。地元松崎町からの出品が多いことは勿論期待されるべきですが、広く全国各地の出品者が応募の主体になることは本コンクールの趣旨に合ったことだと思います。今回、出品者が減少した一つの理由として考えられるのは、今回の応募作品が全体として技術的にかなり高いレベルのものに集約されていたことも関係があると思います。初心者という言い方が適切かどうか分かりませんが、鏝絵の表現にまだ充分には鍛錬していない方たちが出品を控えたという傾向があるかもしれません。もしそうだとしたら、このことは決して望ましいことではなくて、むしろ大いに憂慮すべき問題だと思います。鏝絵の将来は、ベテランの人たちだけではなく、これから新たに鏝絵の世界に挑戦していこうとする(初心)の人たちが増えていくことに正にかかっているはずですから。
大阪芸術大学 客員教授 丹羽 洋介
審査員
- 大阪芸術大学 客員教授:丹羽 洋介
- 美術評論家:安達 めぐみ
- (社)日本左官業組合連合会会長:守屋 清
- 神奈川県左官業組合連合会会長:石井 輝雄
- 月刊「さかん」編集長:小林 澄夫
- 彫刻家:平馬 学
- 長八作品保存会:関 賢助
氏名 | 作品タイトル | 地域 | |
最優秀賞 | 国広 好生 | 「苦悩する魚獲制限」 | 神奈川県綾瀬市 |
優秀賞 | 野中 順子 | 「御陣乗太鼓」 | 愛知県名古屋市 |
飯泉 詔男 | 「冬支度」 | 長野県須坂市 | |
入 賞 | 野田 正三 | 「職人」 | 岐阜県群上市 |
小野 和司 | 「癒しの里の初春(いやしのさと)」 | 埼玉県久喜市 | |
大櫃 孝之 | 「おてんば」 | 島根県安来市 | |
江藤 智子 | 「Love needs no words」 | 大分県宇佐市 | |
新井 良作 | 「夢のリング」 | 埼玉県川越市 | |
小端 裕一 | 「落葉の歩道」 | 神奈川県大和市 | |
中村 一夫 | 「山の旧家」 | 静岡県松崎町 | |
細田 栄作 | 「岩科小学校(回想)」 | 静岡県松崎町 | |
西根 良幸 | 「シーラカンス」 | 栃木県益子町 | |
柳沢 行一郎 | 「百花繚乱」 | 神奈川県相模原市 | |
松田 茂 | 「郷愁」 | 神奈川県大和市 | |
番清 光明 | 「さくら」 | 広島県尾道市 | |
佳 作 | 堀江 弥太郎 | 「雲海の竜」 | 東京都三鷹市 |
藤池 菊雄 | 「朝霧の滝」 | 静岡県松崎町 | |
大曽根 陽次 | 「試作4号」 | 愛知県豊田市 | |
土橋 庄一 | 「黄昏の若草山」 | 京都府京都市 | |
刑部 安司 | 「根上り松」 | 静岡県浜松市 | |
大島 弘巳 | 「レリーフ No.7-2」 | 岐阜県下呂市 | |
佐藤 久 | 秋彩に映える滝」 | 神奈川県大和市 | |
黒崎 剛 | 「鏝絵蔵」 | 新潟県小千谷市 | |
雲藤 利夫 | 「大黒様」 | 福島県いわき市 | |
遠藤 キン子 | 「2000年の地球歴」 | 神奈川県大和市 | |
齋藤 志げ子 | 「網終い」 | 静岡県松崎町 | |
高橋 恒彦 | 「龍」 | 静岡県松崎町 |
最優秀賞作品
「苦悩する魚獲制限」
国広 好生
神奈川県綾瀬市
映像の世界における3D世界の追求は現代の最大の関心事です。鏝絵は本来的に3D(三次元)的作品なので今や時代の最先端にあると言えます。この作品では、奥から手前に飛び出してくる漁船の動きをま横からの水平な光線がさらに強調しています。めりはりの効いたシャープで小気味よい美しさはこの3D効果抜きでは考えられません。正に鏝絵の魅力を集約した作品だと言えるでしょう。
優秀賞作品
「御陣乗太鼓」
野中 順子
愛知県名古屋市
3人の人物の立体感の動きを強く印象づけるために、背景の平面生との対比が効果的に生かされています。お面のところは、生身の人間との違いを強調するためとポイントとしてアッピールするためにみがきをかけているのも成功しています。
「冬支度」
飯泉 詔男
長野県須坂市
コンクール用に特に趣向をこらしたわけでなく、心のおもむくままに素直に凹凸の変化をつけて、それを生かすように薄塗りの着彩を施しています。表現力においてはより勝れた他の多くの作品を一歩リードしてこの素朴な作品が選ばれたのは快挙だと言えるでしょう。かざり気の無さから自然に生み出される一種の情感が見る人の心を捉えたのだと思います。
入選作品
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「職人」 野田 正三 岐阜県群上市 |
「癒しの里の初春(いやしのさと)」 小野 和司 埼玉県久喜市 |
「おてんば」 大櫃 孝之 島根県安来市 |
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「Love needs no words」 江藤 智子 大分県宇佐市 |
「夢のリング」 新井 良作 埼玉県川越市 |
「落葉の歩道」 小端 裕一 神奈川県大和市 |
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「山の旧家」 中村 一夫 静岡県松崎町 |
「岩科小学校(回想)」 細田 栄作 静岡県松崎町 |
「シーラカンス」 西根 良幸 栃木県益子町 |
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「百花繚乱」 柳沢 行一郎 神奈川県相模原市 |
「郷愁」 松田 茂 神奈川県大和市 |
「さくら」 番清 光明 広島県尾道市 |